2018年11月04日

誤った思い込み

昔、アンケート調査の集計とか結果のまとめのレポートを書くような仕事をしていたことがあった。
これは以前にも書いたことであるが、アンケートの結果というのは、だいたいの場合予想を裏切る。
レポートを効率よく書くためには、アンケートをやる前からだいたい落とし所になる結論を決めておいて、そのストーリーに基づいてアンケート用紙を作成し、実際の調査を行う。
それでいざ集計して結果を見てみるのだが、最初想定したストーリーと矛盾するデータがちらほら見えてくる。
したがって最初のストーリーを微妙に修正しながら大筋で「望ましい結論」に着地するようにデータの解釈をあれこれ考え、なんとなく納得できそうな文章をでっちあげてレポートを作る。

言うまでもないがこういうアンケート調査は適切なものとは言い難い。
しかし決められた納期を守りつつお金をくれるお客さんのご機嫌を損ねないようにするには、こうするしかなかった、と言い訳しておく。

人間の思い込みとか、なんとなくの予想というのは、凡人の場合は特にその程度のものである。
その道の達人が行うよく的中する予想は、明示的なデータがない場合でも視界に入る情報を巧みに消化して、事実と大きく違わない結果を導く。
それは将棋の羽生善治が「なんとなく」次の手を考えるのと、将棋の素人が当てずっぽうで手を打つくらいの差、という感じかもしれない。



さて、わたしは例のジャーナリストの安田純平氏の件について、何か述べようと考えている。
安田氏については賞賛する声もあるが、それ以上に非難する声もたくさん聞こえてくる。
それらの非難には「プロの人質」「身代金でテロリストを利した」「韓国へ帰れ」とか、知能レベルを疑うようなものが多い。
一方で戦場ジャーナリズムの自己責任論については、よく検討する必要があるとは思う。

ただわたしとしては安田氏を支持する立場を明確にしておきたい。

シリアという国は日本から遠い。
スティーブ・ジョブスの父親の母国である、という以外にあまり知っていることがない。
しかし日本が多くを依存する中東の石油情勢に大きく影響を与える位置にあり、けっして無視できない。
しかもアサド政権による虐殺行為が日常的に行われているとされ、そこにアサド政権を支持するロシア軍もIS退治を口実に介入して虐殺行為に加担し、事態を複雑化している。
日本は安倍首相の大きなテーマである北方領土問題があるので、アサドを支持するロシアを一方的に非難するわけにもいかない。
そういう微妙な位置関係にある。

また中東では「非キリスト教国」の日本は比較的評判がいいということもある。
エルトゥールル号遭難とかの経緯もあってトルコなどは特に親日的だ。
反対に英仏米露などは、歴史的に中東地域を分断し紛争を煽って搾取してきたという経緯がある。
そういう中で日本人ジャーナリストがシリアに入ってISやアルカイダやアサドの虐殺などの事実を取材することの意味は決して小さくないだろう。

だから安田氏を政府の渡航禁止指示を破って勝手に拘束されて、日本の税金を無駄にしたと単純に非難するのは相当に片手落ちの考え方だ。

おそらく、この拘束事件の記録は書籍になるなりインタビュー記事になるなりしてだんだんと明らかにされていくのだろう。
それが安田氏の義務でもある。
そうなれば安田氏が嘘をついていたとか、やっぱり正しかったとか、そういうこともだんだん明確になるだろう。

そうなった時にわたしの今の考えが、冒頭のアンケート集計みたいな「誤った思い込み」でなければよいが、と思う。
とか思いつつ、今後も明らかにされるだろう「事実」について、引き続き注目していきたい。
 
posted by ヤス at 10:05| Comment(2) | 徒然なるままに
この記事へのコメント
安田さん
帰れてよかったよねー

まぁ
捻じ曲げない報道を願うわ!
🤔
Posted by aoko at 2018年11月04日 14:31
そういうことだな。
Posted by ヤス at 2018年11月04日 16:04
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