2015年12月22日

猿の顔の識別より

日本の類人猿研究は世界でもけっこう先端的であるらしい。
昔、一般向けのサル学の本をいくつか読んだことがある。

で、これは比較的有名な話だが、日本のサル研究者は野生の猿の観察研究において、いわゆる個体識別という方法を用いる。
最近は日本以外の研究者もやっているらしいが、かつては猿の群れの一匹一匹にそれぞれ名前を付けて普通に見分けていた日本研究者に対し、外国の学者はたいそう驚いたそうだ。

サル学者は猿に名札を付けるわけでもなく、顔つきを見て識別する。
体の大きさとか、毛の色などの分かりやすい特徴があればともかく、年齢の近い親戚同士の猿とかだとよく似ていて素人では分からないだろう。
しかし学者は毎日猿を眺めている。
さらに言えばものすごく興味を持って注意深く見ている。
そうやって見ていれば、自然と見分けが付くようになるのだろう。



わたしが大学生の頃、光GENJIというジャニーズアイドルがいた。
光GENJIはウィキペディア情報によると全部で7人のグループだったようだ。
わたしは彼らの存在をいちおうは知っていたけれど、個体識別はまったく出来ていなかった。
そういうわたしに対し、当時の部活の女子からちゃんと全メンバーの顔と名前を憶えるようにと指導が入り、歌番組を見たり本屋でアイドル誌を立ち読みしてなんとなく識別出来るようにはなった。

考えてみると我々人類は、身近にいる人々の顔と名前を憶えておおよそのところで識別出来ている。
これは脳機能のひとつとして人の顔の特徴を抽出し、識別する仕組みによって出来る芸当であると考えられる。
またこれもやや有名な話として「おばあちゃん細胞」説というのがあって、個別の顔に反応する脳細胞が存在するという。
この細胞は顔だけではなく、あるおばあちゃんの声や仕草などにも反応するということで、要するに深い関わりのある人物に対しては1対1で対応する脳細胞があるという。


ところで逆に、学生時代にクラス替えで周囲のメンツがすっかり入れ替わったりすると、A君とB君はそっくりだなあ、と思うようなケースが比較的続発する。
後になってみるとA君とB君はまったく似ていない。
でも会ったばかりの彼らに対しては、自分の脳内に個体識別の情報整理が出来上がっていない。
実はA君とB君の顔面の特徴の中に、自分の個体識別システムのキーになるような共通点が存在していて、それが「そっくりだ」という感覚につながっているのではないか。

上記の現象は、たとえば野球解説者がバッティングフォームを解説したりするときにも感じることである。
長年バッティングフォームを見続けているプロフェッショナルは、一瞥しただけでフォームの良し悪し、そのバッターの調子の具合、スランプの原因、などなどの分析が出来る。

それはそのプロフェッショナルの脳の中で、バッティングフォームの動作を観察するためのひとそろいの脳細胞セットが出来上がっているからだろう。


プロフェッショナルになるということについて、以上のような脳内における神経細胞システムの構築作業をイメージしたのであるが、もちろんこれは聞きかじりの情報に基づくわたしの適当な想像であることは言うまでもない。
posted by ヤス at 15:15| 徒然なるままに