2017年05月31日

終末思想

大昔、わたしが小学生か中学生の頃、「ノストラダムスの大予言」が流行っていた。
大予言によると1999年に空から火の玉が降ってきて世界が滅亡するとかいう話であり、あるいはもうちょっと複雑な予言内容だったかもしれない。

今調べてみると、ノストラダムスというのは16世紀のフランスの医者らしい。
それなりに「まともな人」だったようであるが、後に占星術に凝りだして「予言集」を出版し当時けっこう流行ったらしい。

さらに横道に逸れるならば、グーテンベルクの活版印刷の発明がノストラダムスの時代の100年ほど前である。
16世紀の時代にノストラダムスの予言が流行したことには、当時の新技術であった印刷による情報革命が一役買っていたようである。

そして16世紀に大予言がもてはやされていたからこそ、遠く20世紀中盤の東アジアの一国でその歴史が掘り返されることになったものと想像される。

わたしが子供の頃に「ノストラダムスの大予言」を知るようになったのは、1973年出版・五島勉氏著「ノストラダムスの大予言」という本が出たことが原因であるようだ。
1973年といえばオイルショックの年だ。
当時の日本は高度経済成長でイケイケの時代ではあったが公害問題なども深刻で、決してただ明るいだけの脳天気な雰囲気ではなかった。

そういう時代背景にあって作家・五島勉氏は、16世紀に流行った「大予言」を掘り起こして出版したのである。
作家として活動していた五島氏は、ポルノ小説を書いたり雑誌編集に携わったりスパイ小説を書いたりひとヤマ当てようといろいろ試行錯誤していた形跡がある。
で、最終的に「ノストラダムスの大予言」が大ヒットし、オカルト路線で行くことを決意したようである。


ところで1999年が来る頃には時代を席巻したオカルトブームはとっくに収束していて、恐怖の大王が降ってくると言われていた7月前後に若干テレビなどで暇つぶしに掘り返されたくらいで世界は滅亡することもなかった。
そのかわり2年後にニューヨークに旅客機が突っ込んで予言を思い出す羽目になったわけであるが。
空から何かが降ってきて世界が破滅する、というイメージは、6600万年前に巨大隕石で恐竜が絶滅して以来地球上の生命のひとつの「原体験」になっているのだろうか。

あるいはいろんな社会不安がある中で、個人的に「滅亡」するくらいならいっそ世界中一斉に滅亡した方が望ましいというリセット願望がこういう終末思想の背景にあるような気もする。


しかし不思議なのは、1970年代は公害や戦争による不安要素はたくさんあったが少なくとも日本は経済成長の真っ只中で、ある意味今よりいい時代だったことだ。

当時よりはずっと厳しい時代になっている現在、ノストラダムスの大予言みたいな終末思想があまり聞かれないのは、現実世界があまりにリアルな終末なためにオカルト思想が流行る心の余裕がないということなのかもしれない、と思った。
posted by ヤス at 06:19| Comment(0) | 徒然なるままに