2017年05月16日

暖簾

「暖簾」と書いて「のれん」。
よく見ると、漢字が「暖かいすだれ」になっている。

そこのところが少し気になった。
ちょっと調べてみると「暖簾」というのは「凉簾」とペアの言葉で、昔、店先に夏は日除け、冬は寒気除けにかけた布が起源であるらしい。

これは想像であるが、昔はお店の建てつけが良くなくて、出入り口の引き戸がスムーズに開かないことが多かったのではないか。
それだとお客の出入りのたびに引き戸が引っかかってストレスになるので営業中は戸を開け放し、その替わり目隠しに入り口に布を垂れ下げた。
それが、冬は寒くないように外からの風を防ぐ布、夏は陽をさえぎって暑さを防ぐための竹で編んだ簾をかけたのだろう。

お客が出入りし、通りからも良く目に入る「暖簾」はやがて看板がわりになり、また営業中を示す「記号」になって今日に至ったものと想像する。

最近の暖簾は、地面に届くような長いタイプの、その由来通りに寒風を防げそうなものはどちらかというと少数派のようである。
それよりは、顔にかかるくらいの高さのやつを片手でひょいとめくって店内に入る、そういう短いのが圧倒的に多い。
そして暖簾は布製で屋号が書いてあって、営業開始とともに店主が店先にセットし、営業終了とともにしまう。

そうなるともうそれは元々の「暖簾」ではなく、そこから派生した機能であるところの屋号看板と営業中を知らせる記号としての意味がメインとなっている。

これは多分、建物の建てつけも良くなり、また自動ドアなども発明されてお店のドアの開け閉めが便利になったからではないか。
営業中の店では入り口は必要な時だけ開ければ良いので、そこに風除け日除け機能は必要ない。

したがって記号的な機能だけが残ったのだろう。

さらに。

「のれん」は会計用語にもなっている。

最近では東芝や日本郵政が、「のれん代」をめぐって巨額の損失を相次いで出した。
この場合、あの店先にひらひらしている小さな布切れに数千億円の値がついていたというわけでは決してない。
WH(ウェスティングハウス)はアメリカの会社なので、会社の入り口に「のれん」を下げたりはしていないものと思われる。

話が逸れた。

「のれん」というのは、現代ではそもそもの機能や使用目的からは幾分変性し、その店の評判や営業の内容を表す記号になっているようである。
ある意味そういう抽象概念を「暖簾」という物体に仮託することによって、「のれん」を大切にしようという意識が芽生える、ということで「のれん」はおろそかにできないのである。

と思った。
posted by ヤス at 10:37| Comment(0) | 徒然なるままに