2017年03月28日

忖度

「忖度」と書いて「そんたく」と読むらしい。
今回の森友学園事件の最大の功績は、行政官僚組織における「忖度」のメカニズムをクローズアップしたことではないか。

忖度という言葉自体はもうずっと昔から存在し、会話の中にもごく稀に紛れ込んだりすることもあった。
しかしこの言葉の持つ不思議なメカニズム、あるいは魔法のような効力に関しては、ほとんど意識することがなかったような気がする。

わたしが若かりし頃サラリーマンをやっている時分の苦い思い出であるが、しょっちゅう「お前は本当に気が利かない」と言われていた。
全く、何かのおまじないのように繰り返し「気が利かない」と言われていて、たまに渾身の「気を利かせる」ことを頑張ってみたら、今度は「余計なことをするな」と言われる。

あまりに卑近な例を持ち出すのは適切ではなかったかもしれないが、「気を利かせる」こと、すなわち「忖度」することは、なかなか高度な技術であると個人的には思うのである。
「忖度」というのはそのものずばりの英語訳が存在しないようで、つまり多分、日本に独特の概念であるらしい。
考えてみると忖度は、組織文化的にもかなり高度な概念である。
忖度のメカニズムにおいては、上司と部下の間に明示的な指示命令が存在しない。
だから何かことが生じた際に、責任が上司に及ばず部下のところでせき止められる。
おそらく責任を一身に背負った殊勝な部下は、後で「おつとめご苦労さん」とかなんとか上司に労をねぎらわれて、それなりの戦後補償を受けることができるのだろう。
(あるいは非情な上司の場合、あっさり「トカゲの尻尾」にされて終わりかもしれない)

今、国会では森友学園問題で野党による安倍首相への執拗な追及が続けられている。
しかしこれによって現政権が退陣はおろか何らかの責任を負うこともないだろう。
それはこの問題が主要部分においてどうも「忖度」メカニズムによって駆動されていることが考えられ、その場合政治家や官僚幹部による現場への明確な指示命令の証拠は当然に存在しないからである。

評論家によっては、だから野党の追及は無意味であって、本来の予算審議に集中した方が良いという意見もある。
しかしその場合、国有地をびっくりするような安値で購入する可能性は、その裏道を知っている人にとっては違法性のない「当然の権利」として是認されることになる。
いわゆるモラルハザードが生じる。

森友問題の意味というのは、国有地の購入にあたって「忖度」メカニズムを起動することによって少なくとも市価の10分の1以下で購入できることが白日の下に晒され、しかし問題が明るみに出ることでさあこれから安く国有地を買おうと思って順番待ちしていた人々がなかなか安く買いづらくなって地団駄踏んでいる、そういうこともあるのかもしれない。
だから国民としては、国有財産の価値を保持するためにこのことを忘れないように努力しないといけない。
というのは、まあ難しいのかもしれないなあと思った。
posted by ヤス at 10:35| Comment(0) | 徒然なるままに