2016年09月04日

出アフリカと日本人の起源

人類学者の海部陽介(東京上野の国立科学博物館の研究者)氏の書いた「日本人はどこから来たのか?」を読んだ。
日本人がどこから来たかについてはこれまでもたくさんの仮説があって、そのおおまかな流れはなんとなくイメージ出来るのだが、腑に落ちる、というレベルにはほど遠かった。

従来の研究で日本人はおおよそ3つのルートから列島に移住してきたのだろうというのはなんとなく分かる。

ひとつはシベリア方面からサハリンを経由して北海道に達するルート。
今から3〜5万年前は地球全体の温度が低い「氷期」に当たり、海面が現在より80mほど低く北海道は大陸からつながる半島だったので、ナウマン象などの大型獣を追って徒歩で来たのだろう。

2つ目は朝鮮半島から対馬を経て北九州付近に至るルート。
やはり氷期には本州と四国、九州は地続きで、対馬と本州、朝鮮半島の間の海も今よりはだいぶ狭かったようである。

3つ目は台湾から沖縄などの琉球諸島に至るルート。
こちらも海面の低い昔には、島々は海からいくらか余計に突き出ていたものの、地続きになることはなく海で隔てられている状況は現在とさほど変わらない。
古代人類は黒潮に乗って台湾付近から琉球諸島に渡海したものと思われる。

この3つのルートは今までもおおむね明らかだったが、ではどのルートが一番最初で、どの順番で人が渡ってきてどのように列島に浸透していったのか、その様子ははっきりイメージ出来なかった。

冒頭の海部博士の研究は、3つのルートからの人類移住の歴史年代を特定し、その移住の「流れ」のイメージがかなりくっきりと浮かび上がるものなのである。

結論から言うと、3万8千年前頃に対馬ルートから移住第一波が本州にやってきて、相前後して琉球ルートで沖縄諸島に人類が浸透し、少し遅れて2万5千前ころに北海道にも人類がやって来たということらしい。



日本人の列島移住の物語を解明するためには現世人類=ホモ・サピエンスの「出アフリカ」について押さえておかねばならない。
最近の人類史研究の大きな成果として、ホモ・サピエンスのアフリカ単一起源説がある。
「イブ仮設」などと言うのがあって、今地球上に生きている70億人の人類のご先祖は、辿って行くとアフリカの一人の女性から生まれたというのがそれである。
イブ仮設の真偽はよく分からないが、ホモ・サピエンスの祖先がアフリカの極小数の人類集団だというのはどうやら間違いが無い。

それが4万8千年前頃、中東を経由してユーラシア大陸に進出し、さらに2〜3千年のタイムラグである集団はオーストラリアに至り、ほぼ平行して別の集団はシベリアやヨーロッパに到達する。

ちなみにホモ・サピエンスが中東に進出した際に、先住の旧人であるネアンデルタール人と混血したという説がDNA研究から発表されており、そちらの話も興味深い。

そういう出アフリカの大枠の中で、3万8千年前頃に日本列島にホモ・サピエンスが到達したという流れであるようだ。
日本列島では、ヒマラヤ山脈・チベット高原の難所を迂回して北回りのシベリアに向かった人々と、インドから東南アジア方面に向かった人々が再び合流したことが推測され、その点もたいへん面白い。

これもDNA研究では、現世日本人のDNAタイプは他の地域の人類と比べるとものすごくバリエーションが豊富でさまざまに混血して今の日本人が出来上がっていることを物語っているという。
海部博士の研究はそのような話にも合致する。

ということで、海部博士のおかげでこれまで日本人の起源についてのモヤモヤした感じが少し払拭してなんだかかなりスッキリした。
posted by ヤス at 13:16| Comment(0) | 徒然なるままに