2016年08月26日

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?(角川文庫)

「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?(角川文庫)」の読書感想文を書く。

2011年頃、不信を極めていた大阪の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」いわゆるUSJがいかにしてV字回復を遂げたかについて、マーケティング全般を取り仕切った同社の森岡毅氏が書いた本である。

わたしはこの本の内容に少なからず感動し、思わず森岡氏が最近になって書いた他の本2冊もKindleで買ってしまった。
森岡氏によるとUSJも中小企業の域を出ないとは言うのだけれど、日本のテーマパーク業界で東京のディズニーランドに次ぐ2番目のポジションのUSJは、やっぱり普通の中小企業よりはかなり大きい。
だからUSJのマーケティングの具体例が世の中の中小企業にそのまま役に立つかどうかというのは微妙な問題だ。

ただそういう即物的な読み方でなく、マーケティングの基本についての解説本として読めるところにこの本の価値があると思った。

世の中にマーケティングの本はたくさんある。
しかし個人的な観測に基づいて述べるならば、世の中の多くのマーケティング本は、ちょっと学術的理論に寄り過ぎのように感じる。

4つのPがどうしたとか、4Cがどうとかの理論について語る本は多いのだが、本来のマーケティングの役割は「現実世界を動かす」ことにあるのであって、そういうことで従来のマーケティング本には「理論の解説」と「現実を動かす」の間になんとなく空隙がある感じがぬぐえなかったのである。
「USJのジェットコースター・・・」は、そこのところの空隙を埋める本だと思った。

著者の森岡氏はUSJのV字回復に向けた企画の数々を、その発想段階から実現プロセスに至るまでかなり理詰めで考え抜く人であるらしい。

企業経営の世界において、理詰めで考えるタイプの人間は、例えば経営コンサルタントなどはその典型であろうが、そういう人間は往々にして現実世界に作用出来ないタイプが多いような気がする。

しかし稀に、理詰めでかつ現実世界に作用出来るタイプの傑物がいるようである。
たぶんそういう種類の人間のことを「マーケッター」と呼ぶ。

理詰めで考える人は行動が伴わないことが多く、行動力の旺盛な人は理屈が追い付かない、ということが多いと思われる中で、この2要素がバランスしているところにおそらく「マーケッター」の存在価値はある。

また、商売で上手に売上を創造する能力というのは一種の天賦の才のようなイメージがあったのだが、本来のマーケティングというものは、天才ではない凡人が地道な積み上げで天才以上の成果を上げうる、世間の大多数の凡人のためにマーケティングというのはある、ということをこの本を読んであらためて思ったのでした。
posted by ヤス at 15:19| Comment(0) | 徒然なるままに