2016年07月29日

ホメオスタシス

ホメオスタシス、について思いつくことを書こうと思う。
ホメオスタシスはホメオシスタスでもなくホメオスシスタでもなく、無論のことホオジロザメでもホメゴロシでもない。

ホメオスタシスである。

ホメオスタシスという言葉は生物学者の福岡伸一博士の本なんかに時々出てくる。(と思う)
日本語では「恒常性」というらしい。
哺乳類などの恒温動物が体温をある一定に保とうとし、身体が熱くなると汗をかいたり逆に冷えるとブルブル震えて熱を発生させようとしたりする働きのことを言う。

考えてみると、生物、特に人類をはじめとする哺乳動物などは身体の構造がものすごく複雑である。
そして、生命以前の世界、無生物の世界にはそういう複雑な構造は無い。(と思う)
地球のような天体は図体は生物に比べて圧倒的に大きいが、その構造は極めて単純だ。
宇宙のチリがお互いの引力で次々くっついて出来上がった地球は、その中心から組成物質の重さの順番に層構造を成しているくらいで、その内側に神経細胞や血管が走ったりしているわけではない。

それに比べると生き物の身体は、血管や内臓などの精巧なメカニズムは言うに及ばず、細胞レベルにズームインするとさらに細胞核やらミトコンドリアやらの細かい構造がある。
さらに分子レベルではDNAによる自己複製機能もあって、その多重的な複雑さは無生物世界の比ではない。

生物の最大の特徴はそのかなり「不自然」な複雑さにあると思われる。
そしてホメオスタシス=恒常性は、複雑さを維持しようとする働きということが出来る。
エントロピー法則の支配下にある無生物の世界では、複雑な構造は擦れたりぶつかったりしてあっという間に風化し、単純な構造に壊れる。
それに抗って複雑さを維持する存在が、生命なのであろう。

急にホメオスタシスのことを思い出したのは、本屋でミリタリー雑誌を立ち読みしていて、そこに旧帝国海軍の航空母艦・信濃の最期の記事を見たのがきっかけである。
大和型戦艦の3番艦を途中から改設計して進水した信濃は、艤装工事を完成するために横須賀から呉に回航されていたが、その途中に米軍潜水艦の発射した魚雷4発を受けて沈没した。

信濃の同型艦だった大和と武蔵は、魚雷を15〜20本も受けてその上爆弾も10発以上命中してやっと沈んだのだ。
本来同じ防御力を持っていたはずの信濃が4本の魚雷であっけなく沈んだのは、ひとつには工事途中で水密区画が未完成だったこと、もうひとつは乗員訓練が不十分でダメージコントロールが未熟だったことが理由である。

信濃のような人間が作った複雑な機械がホメオスタシスを発揮するには、ホメオスタシスの機能についても人為的な努力によって与えることが必要なのは言うまでもない。

しかし往々にして人工物のホメオスタシス性能は脆弱であることが多いようだ。
信濃のケースはその象徴的な出来事のような感じが、なぜかしたのである。
信濃が魚雷4発で沈んだケースに限らず、人類の作ったあらゆるものは往々にしてすぐに壊れる。
それらの脆弱性からは、数億年の進化期間に鍛えられた生命のホメオスタシス性能に比べてせいぜい数千年か数万年の経験値しかない人類文明の分が悪いことが如実に感じられるような気がする。

ホメオスタシスはホメオシスタスでもなくホメオスシストでもなくホメオスタシスである。
念のため確認しておく。おしまい。
posted by ヤス at 14:57| Comment(0) | 徒然なるままに