2016年01月10日

ピークの高さより安定感

プロの仕事とは、ということについての論点はいくつかあると思う。
価格付けなどお金の面、仕事の品質はどうあるべきか、あるいは組織論や進め方などの方法論的な見方もある。

で、仕事の成果の安定感がけっこう重要なんじゃなかろうかと、ふと思ったのである。

先日本屋で立ち読みした本に、マラソン選手で市民ランナーの星である川内優輝選手の大学時代の監督が書いたのがあった。(本は買って読みましょう)
その監督が言うには、マラソンの練習で大切なのはとにかく故障しないこと。
彼が監督する学習院大学の長距離陣は、そもそも駅伝チームを組むためのギリギリの人数しか部員がいない。
だから一人でも脱落すると駅伝に出場できなくなる。
そういう事情のところに川内は入ったわけだが、強豪高校で猛練習して故障がちであった川内は、びっくりするほど楽な環境の中で故障しなくなり、かつ、その才能を開花させていったんだそうな。

その監督が言うには、マラソンに必要なのは一定のペースで最初から最後まで押していくこと。
そして日頃の練習の目的は、レース終盤にバテバテになった最低状態の時のペースを底上げすることにあるのだという。

マラソンというのは、最初の方でいくら快調に飛ばしてもラスト4km、5kmでブレーキが掛かると前半の貯金分を簡単に食いつぶしてさらに何倍もおつりがついてくる。
ランニング愛好家のレジャーとしてのマラソンであれば前半をそろりそろりとスタートしてペースの調整も自由にできるだろうが、勝負の掛かったシリアスランナーの場合そうもいかない。
競合とのペースの駆け引きをやりながら、終盤バテてブレーキの掛かった状態でどこまで速く走れるかが問題になる。


マラソンとお金をもらってやる仕事はもちろん単純比較はできないわけだが、悪条件が重なった時にどこまで粘れるか、そしてその中で合格点の結果をひねり出せるか、というような特性は、ジャンルを問わず強い競技者の条件であるように思う。
野球のピッチャーでも真のエースは、調子の悪い時の投げ方、勝ち方を知っているっていうし。

人間ややドツボにハマると、ホームラン狙いの大振りをしがちになり、成果のピークの高さを欲しがる傾向があると思う。
しかし長い目で見るなら、成果の谷底を一定以上のレベルに底上げすることの方がたぶん大切になる。
そのように、悪条件でも一定以上の成果を出せるのがプロの仕事といえるのではないか。


ということで、42kmの最後の5kmのドツボ状態をどう粘るかが、今のわたしにとっての最大の問題である。
posted by ヤス at 09:57| 徒然なるままに