2015年11月08日

見た目の演出

人間にとって、取り分け職業生活において、見た目は大事だ。

ものの本にはよく、人間が外部情報を認識するにあたって視覚情報に依存する割合が8割くらいだとか書いている。

職業生活にとっての見た目の大事さを象徴する事象は、就活における黒や濃紺のリクルートスーツである。
就活学生は否が応でも自分の見た目に敏感になる。
おそらく、転職も含めて就職活動を行っている最中が、彼・彼女の職業人生においてもっとも自分の見た目に注意を払う時期であろう。
リクルートスーツはいかにも没個性に見えるけれど、就活ガイドのサイトをのぞくと、その目的は服装に対するマイナス評価を回避するということらしい。
でも、時々街なかで遭遇するリクルートスーツを「群れ」で見ると、なんだかものすごい違和感を感じたりする。


そんな就活生も、いったん企業に入ってしまえば他にもっと重要な関心事が発生し、見た目に対する意識が薄れていく。
特に男性、特におじさんにおいてその傾向が顕著になる。
一方で女性は男性より自分の見た目に注意を払う。
男性の場合、おじさんになるにしたがって見た目への注意がおろそかになるのに、女性の場合はキャリアを重ねるほど見た目への投資額が増加する傾向があるのではないか。
キャリアウーマンにとって、男性優位の仕事社会でのし上がるには、見た目の印象をコントロールすることも含めてあらゆる要素を総動員しないと戦えない、ということなのだろうか。
(それとも単なる思い込みかもしれない)


ところでわたしはかつて広告業界にいた。
前言と相違するが、広告業界では女性はもちろん男性でも自らの見た目に大きな注意を払っていた。
スーツやネクタイや靴のブランドは言うに及ばず、自家用車に古いワーゲンをチョイスし、あるいは並行輸入で入手した見たことのない東欧製外車を乗り回したり、その努力はしばしば常軌を逸していた。

で、業界の男性に必須の見た目アイテムとして「ヒゲ」があった。
産業別「ヒゲ」比率は、広告業界がダントツで高いと思われる。
これはかつて広島県庁の仕事をしていて、県庁の担当者に指摘で気付いたことである。
たまたま会議で居並んだ時に、県庁の人に「そちらのチームはみんなヒゲなんだねー」と言われた。
(わたしはその時も含めて生まれて以来ヒゲはない)

広告業界人は生来、アピールすることのプロフェッショナルであり、そのためにはいかにもアピールの達人に見えるようにアピールする必要がある。
しかし時として流行りのスーツでビシっと決めて、ヒゲを綺麗に手入れして会議の席に座ってみると、同じようなヒゲ面が3、4人並んでいて見分けがつきにくくなるという怪現象が発生したりする。

職業人において、自らの見た目を演出するのはかなり面倒くさい問題である。
世のおじさんたちが、自分の見た目に無頓着になる気分もなんとなく分かるのだ。
posted by ヤス at 07:40| 徒然なるままに